多額のお金が必要になる「大規模修繕工事」。計画から完了までの間、一度もクレームや苦情がなくスムーズに終わることはかなり少ないと言えます。

そのため大規模修繕工事を考えておられるマンションやテナントの修繕案件のオーナー様
には、できるだけトラブルを未然に防ぐ方法や、ある程度想定しておき先回りした対処の方法を理解しておかれることが必要です。

そこで今回は、大規模修繕工事を行っている株式会社 泉が、これまでの現場経験からトラブルになりやすい原因と対処法についてまとめてみました。参考になれば幸いです。

1: 大規模修繕工事のトラブル原因とは

大規模修繕工事のトラブルになりやすい原因は、大きく分けると次の3つがあります。修繕工事委員会に任命された方、管理組合の方、オーナー様に覚えておいていただきたいことです。

(1)マンション居住者やテナントオーナー

マンションやテナントには、そこで暮らしている方や仕事をしている方がいらっしゃいます。そのため急に予定よりも早く修繕工事が始まるとか、突発的な作業が発生したりすると「そんな話は聞いていない!困るんです!」というようなトラブルが発生しやすくなります。

また、当初予定よりも修繕工事期間が長くなってしまうと「いったいいつまでやってるんだ!」というクレームも発生する可能性が高くなります。

そして、これはなかなか解決しづらいのですが、

・工事修繕業者がベランダに入って工事している
・見たことのない人がウロウロしている
・騒音がするので困る
・異臭がするので困る

こういったことがトラブルの原因になることもあります。

(2)工事会社や設計業者

修繕工事を依頼した会社や、修繕内容を設計した業者との間にトラブルが起こることもあります。

例えば次のようなことが原因になりやすいです。

・当初の説明よりも施工の品質が低かった
・工事期間が長引いた
・施工会社のスタッフと居住者やテナントスタッフと揉め事が起こった
・追加工事費用の請求が来た
・契約してから施工会社が倒産した
・工事完了を確認した後で施工不良が見つかった

修繕工事委員会や管理組合、オーナー様達では回避しづらいことが原因でトラブルが起こってしまう。そんなこともあります。

(3)建物の外部の人やお店

これは大規模修繕工事に限らず、少し大きめの工事を行うと発生しやすいトラブルです。

・修繕工事の音がうるさい
・異臭がしてきて窓が開けられないので困る
・修繕工事用に設置した足場から覗かれている気がする
・工事業者の手違いで近くの水道やガスが止まった
・車の出入りが激しいのでお客が来なくなった

近くにお住まいの住民の方や、お店をされている方には、多かれ少なかれ何らかのご不便をお掛けすることになるため、こういったトラブルの原因になるケースもあります。

2: トラブルに備えた心構え

このようなことが原因となってトラブルが起こりうるため、修繕工事をされる場合には、予めトラブルに備えた心構えをしておく必要があります。

(1)コミュニケーションの心構え

居住者、テナントオーナー、近隣住民やお店の方。人は自分が大切にされていないと感じるとクレームを言いたくなる生き物です。

そのため、ものすごく小さなことであっても「自分が知らないこと」が目の前で起こると過敏に反応し「クレーム」という形で伝わってしまいます。

ここで修繕工事をされる方々に覚えておいていただきたいことは、どんな小さな工事も、変更内容も、必ず定例会議などを通じて情報共有を図り、コミュニケーション不足をなくす心構えを持っていただきたいと思っています。

また、この場合の情報共有は施工業者や設計業者とも連携することで、あちらとこちらで話が食い違っているという、あってはならない状況を回避することができます。

(2)管理組合の心構え

大規模修繕工事を検討されるとき、ほとんどの場合は「修繕工事委員会」のような組織を設置されると思います。しかし、この組織に丸投げして終わりというのは良くありません。

大規模修繕工事を最後まで出来るだけスムーズに完工させるためには、管理組合を適切に機能させ、共に修繕工事について係わっていく必要があります。

(3)修繕費の心構え

修繕費についてのトラブルは発生しやすいです。当初予定の費用よりも工事をすると高くなった。思っていたよりも修繕箇所が多く、積み立てしていた修繕費では不足していた。このようなケースもあります。

こういった場合、不足額をどのように工面するのか、予め検討しておくことも必要です。不足額が大きくなければ、定例会議で説明し居住者から追加徴収をするのも方法です。

不足額が大きい場合は、居住者から理解を得られないこともあり、工事が途中で止まってしまう。そんなことも考えられます。

このような結果にならないために、修繕費の不足が起こらないかどうか、確実な見積もりを手に入れることが大変重要になってきます。中途半端な技術を持った施工会社や設計会社では、修繕工事費用にブレが生じることもあります。

お金のトラブルは様々なところに影響を与えます。また、長くトラブルの原因にされてしまうこともあります。経験豊富な目利きの管理者や職人スタッフがいる業者を選ぶようにしましょう。

3: 修繕工事別トラブル対処法

工事タイミング別に起こりやすいトラブルと対処法を見ていきます。

3.1: 工事前に起こりやすいこと

まずは工事前に起こりやすいことからお話します。

(1)修繕工事委員会結成

一般的に考えて、自ら委員会に入りたいという人は多くありません。ほとんどの方はお仕事をされながら委員会を兼任することになりますので、できることなら関わりたくない、というのが本音だと思います。

そのため、本当に少人数(2~3人)だけで委員会を立ち上げ、計画を進める時間もないため管理会社やコンサルタントへ丸投げしてしまう。そんなケースもあります。そうすると工事費用が高くなることもありますし、自分たちの考えていた修繕にならないということもあります。

確かに修繕工事委員会を結成するのは難しいかもしれません。でも、公平性や幅広い年代からの要望、判断を仰ぐためには5~10人くらいのチームを結成していただきたいと思います。

(2)修繕積立金不足

先ほども少しふれましたが、意外に多いのが修繕積立金の不足問題です。この問題が起こる背景には、次のような原因が多いと言われています。

「修繕工事計画の不備」

長期的な視点で計画をしていなかったため、必要になる修繕費を集められていなかったということもあるようです。もし、このような状況に現在なっているのなら、速やかに次のような対策を検討しましょう。

・不足分を一時金として徴収させてもらう
・修繕工事の内容を見直す
・管理組合が主体となって住宅金融支援機構から融資の検討をスタートする

どの対策を行うにしても、居住者など関係者には詳細な説明をする必要があります。「何とかなるだろう」と先延ばしにしても良い結果にはなりません。お金に関する問題は、早期対策と解決が必要です。

(3)談合

丸投げすることで発生しやすいのが談合です。談合とはコンサルタント会社と施工会社が癒着して起こります。工事費用を意図的に高くして、バックマージンを不正に得ることもあります。

このようなトラブルを防ぐためには、修繕工事委員会を結成し管理組合と一緒に工事について検討することです。決して丸投げしてはいけません。

3.2: 工事中に発生しやすいこと

つづいて工事中に発生しやすいトラブルと対処法です。

(1)居住者やオーナーからのクレーム

これは起こります。どんなに説明していても起こります。

このようなクレームを出来るだけ抑えるためには、「あなたのことを大切に考えています」という意味を込めて、細かな工事についても都度「お知らせ」しておくことが大切です。

(2)バルコニーの私物クレーム

工事をしようとすると設置してはいけない場所に私物が置かれたままになっている。「個人使用が認められた共用部」への設置は、工事を遅らせてしまう原因になります。

スムーズに工事を終わらせるためにも、居住者への徹底した説明を行っておきましょう。こういったことが原因であっても、工事が遅れると委員会や管理組合にクレームが入ってきます。

(3)空き巣被害

希にあるのが足場からの空き巣被害です。足場の1階部分に防犯カメラの設置を業者へお願いしましょう。

(4)プライバシー侵害

これも多いクレームです。対処法は2つです。

・お部屋のカーテンを閉めることを徹底してもらう
・作業員は室内へ視線を向けないようにしてもらう

(5)店舗看板のトラブル

外壁塗装のとき、一時的に外さないといけないこともあります。そうした場合の脱着費用や外している間の代替え看板の費用についてトラブルになることもあります。

管理組合が主体となって費用負担や代替え看板の設置場所を決めておきましょう。

(6)近隣住宅や店舗からのクレーム

これもゼロにはならないクレームです。

しかし、できることはあります。できるだけ近隣住民とのコミュニケーションを高めることです。騒音の出る工事の場合は、予め「お知らせ」を行っておきましょう。

(7)施工会社の倒産

施工会社が倒産して工事が継続できない。そんなケースもあります。このようなトラブルを招かないためにも、施工会社の選定は大変重要です。

堅実に地域で仕事をしている実績のある会社を選んでおきましょう。

3.3: 工事後に困ること

(1)数年で漏水

あってはならないトラブルです。1~2年で漏水するようなら施工不良も考えられます。こういった場合に備えて、施工会社の「保証」を確認しておきたいところです。

(2)追加工事費用請求

見積もりにはない工事をした場合、追加工事費用が発生します。ここでのポイントは、追加工事であっても工事着手前には見積もりを提示してもらうことです。そして管理組合の承認を得てから工事を進める。このような段取りが重要です。

承認もなく見積もりも提示しないまま、勝手に追加工事されても困ります。トラブルは事前の約束事で抑えるようにしましょう。

4: まとめ

大規模修繕工事は大きなお金が動きます。また、工事期間も比較的長期になります。そのためクレームも発生しやすいのですが、今回お話しました内容を参考にしていただくことで、少しは予め抑えることができると思います。

全てのクレームを予測することはできませんが、ある程度は決まったクレームですから、できることは対処法を知り、準備しておきましょう。

そうすることで、工事もスムーズに完工できるはずです。


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