マンションの大規模修繕が発生した際に、費用を資本的支出と修繕費のどちらで計上すべきか迷っていませんか。
減価償却の計算方法も知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、マンションの大規模修繕費の会計処理について、資本的支出と修繕費の違いをわかりやすく解説し、減価償却の計算方法についても具体例を交えて説明します。
これを読めば、大規模修繕費の会計処理に関する不安が解消していきましょう。

 

□資本的支出(減価償却)と修繕費の違いとは?

 

マンションなどの大規模修繕費は、会計上「資本的支出」と「修繕費」のいずれかで計上します。

 

1:資本的支出とは、固定資産の価値や耐久性を高める支出のことです。

 

例えば、建物の増築や耐震補強、外壁の断熱材追加など、建物の価値や機能を向上させるような工事です。
資本的支出は、固定資産として計上され、減価償却の対象となります。
減価償却とは、固定資産の価値が時間の経過とともに減っていくことを考慮して、毎年一定の金額を費用として計上する処理です。

 

2:一方、修繕費は、建物の損傷部分の原状回復や、定期的な維持管理を図るための支出です。

 

例えば、外壁の塗替え、雨漏りの修理、壊れた備品の交換など、建物を元の状態に戻したり、機能を維持するための工事です。
修繕費は、発生した年度の費用として計上されます。

 

3:資本的支出と修繕費の使い分けは、工事の内容によって判断します。

 

具体的には、以下の基準を参考にしましょう。
・固定資産の使用可能期間を延長、もしくは価値を高めるために行った修理やリフォームであれば、資本的支出となります。
・維持管理や壊れた部分を元の状態に戻すことを目的とした工事であれば、修繕費となります。

 

 

 

□資本的支出と修繕費の使い分けと具体例

 

では、具体的にどのようなケースが資本的支出、修繕費に該当するのか、例を挙げて説明しましょう。

 

1:資本的支出の例

 

・防水加工工事:建物の寿命を延ばす効果があるため、資本的支出となります。
・耐震補強工事:建物の耐震性を向上させるため、資本的支出となります。
・外壁塗装に断熱材を追加:建物の断熱性能を高め、省エネ効果も期待できるため、資本的支出となります。
・オール電化への移行:エネルギー効率を向上させ、ランニングコストを削減するため、資本的支出となります。
・バリアフリー対応への改築:高齢者や障害者にとって住みやすい環境を作るため、資本的支出となります。
・リフォームや増改築工事:建物の用途や機能を大きく変更する場合、資本的支出となります。
・非常階段などを建物にあとから設置:建物の安全性を高めるため、資本的支出となります。
・照明設備など10万円以上の設備の新設:建物の機能を向上させるため、資本的支出となります。
・機械などの設備をグレードアップ:設備の性能を向上させ、業務効率を上げるため、資本的支出となります。

 

2:修繕費の例

 

・外壁の塗替え:建物の美観を維持するため、修繕費となります。
・部分的な防水改修工事:雨漏りを防ぐため、修繕費となります。
・雨漏りの修理:建物の損傷部分を元の状態に戻すため、修繕費となります。
・電球や壊れた備品などの交換:建物の機能を維持するため、修繕費となります。
・壊れた備品などの補修:建物の損傷部分を元の状態に戻すため、修繕費となります。
・外壁のヒビや亀裂の修復:建物の損傷部分を元の状態に戻すため、修繕費となります。

 

3:明確に分けられない場合の基準

 

資本的支出か修繕費か明確に分けられない場合は、以下の基準を参考に判断しましょう。
・費用が20万円未満の場合:資産の価値が増加する場合でも、修繕費として処理されることが多いです。
・費用が20万円以上でも、約3年以内に再び同じような修理が必要となる場合:修繕費として処理されることが多いです。

 

 

□大規模修繕費の減価償却計算方法と耐用年数

 

資本的支出となる大規模修繕費は、減価償却として毎年経費計上します。
減価償却費の計算方法には、定額法と定率法がありますが、建物の場合は定額法が用いられます。

 

1:定額法による減価償却費の計算式は以下の通りです。

 

減価償却費=(取得価格-残存価格)÷耐用年数

 

2:取得価格は、大規模修繕に要した費用です。

 

残存価格は、建物の耐用年数が終了した時点での価値です。
一般的には、残存価格は0とみなされます。
耐用年数は、建物の構造や用途によって異なります。

 

3:建物の耐用年数は、国税庁が定めた「耐用年数表」で確認することができます。

 

例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションの場合、耐用年数は50年です。

 

4:例として、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用マンションに1,000万円の大規模修繕を行い、耐用年数を50年とすると、年間の減価償却費は以下のようになります。

 

減価償却費=(1,000万円-0)÷50年=20万円

 

5:つまり、このマンションの場合、毎年20万円を費用として計上していくことになります。

 

□まとめ

 

この記事では、マンションの大規模修繕費の会計処理について、資本的支出と修繕費の違い、減価償却の計算方法を解説しました。
資本的支出は、建物の価値や耐久性を高める支出で、減価償却の対象となります。
一方で、修繕費は、建物の損傷部分の原状回復や、定期的な維持管理を図るための支出です。
資本的支出と修繕費の使い分けは、工事の内容によって判断します。
資本的支出となる大規模修繕費は、減価償却として毎年経費計上します。
減価償却費の計算には、建物の耐用年数を算出する必要があります。
この記事が、マンションの大規模修繕費の会計処理に関する理解を深める一助となれば幸いです。


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