建物の老朽化や経年劣化は、その耐久性や安全性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
特に、マンションやアパートなど集合住宅では、共有部分の主要構造部が定期的なメンテナンス
を要します。
壁や柱、床、屋根などの修繕が行われることで、住民の安全と快適な生活環境が維持されます。
アパートのオーナーや管理会社の方の中には、大規模修繕工事を検討している方もいらっしゃる
のではないでしょうか。
本記事では、大規模修繕工事とは何か、また大規模修繕工事の内容、大規模修繕工事の確認
申請についてご紹介します。

□大規模修繕工事とは

建築基準法第2条14号によれば、大規模の修繕とは、建築物の主要構造部の一種以上につい
て行う過半数の修繕を指します。
修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものと同じ位置に同じ材料、形状、寸法のもの
で修復することを意味します。
具体的には、建築基準法第2条5号によれば、主要構造部とは壁、柱、床、はり、屋根、階段を指
し、これらの修繕が大規模修繕の範囲に含まれます。
例えば、壁や柱、屋根の修繕がそれに当たります。
また、大規模の模様替えも建築基準法で定義されており、主要構造部の一種以上について行う
過半数の改造を指します。
模様替えとは、建築物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲での改造を意味します。
国土交通省は、これらの大規模修繕計画の作成に関するガイドラインを公開しており、マンション
管理組合などが適切な計画を立てる際の手助けとしています。
大規模修繕や模様替えを行う際には、建築基準法の規定に基づく確認申請が必要な場合があ
ります。
特に、一定の種類や規模を超える建物においては、事前の確認申請が法律上の義務となってい
ます。

 

 

 

□大規模修繕工事の内容

共有部分の修繕は、住民にとって非常に気になる部分です。
工事に入る前に、住民向けの説明会を行い、同意を得た上で進めます。

1: 仮設工事

最初に行われるのは仮設工事です。
これには、作業員が効率的に作業できるように、現場事務所や足場の設置が含まれます。
足場の周囲には、落下防止や塗料の飛散防止のためのメッシュシートも設置されます。
これらは工事中の安全性と品質管理に欠かせない重要な役割を果たします。

2: 下地の補修工事

下地の補修は、コンクリートの骨組み部分に生じたひび割れなどの修繕を指します。
下地の状態が良くないと、後の工程や建物の耐久性にも影響を及ぼすことがあります。

3: タイルの補修工事

タイルは経年劣化により、接着が弱くなったりひび割れが生じたりします。
これにより雨水の侵入や安全上の問題が生じることがあります。
タイルの補修により、防水性や耐久性、安全性を確保します。

4: シーリング工事

シーリング工事は、シーリング材を新しくすることで外壁のつなぎ目や窓周りの密閉性を高め、雨
漏りのリスクを低減します。
また、断熱性や気密性の向上にも寄与します。

5: 外装の塗装工事

外壁の塗装は、雨や風、紫外線などから建物を保護し、劣化を防ぎます。
塗装には、塗料の除去と新しい塗料の塗布、または上塗りのケースがあります。

6: 鉄部の塗装工事

外部の鉄部分は風雨によって錆びや劣化が進みますが、定期的な塗装により見た目と耐久性を
維持できます。

7: 屋上の防水工事

屋上の防水層の定期的な補修と点検は、建物の構造を守るために不可欠です。
水漏れや構造部の損傷を防ぐことが目的です。

8: 給排水設備の補修

給水管や排水設備の点検と補修も重要です。
これらの設備が劣化すると漏水事故のリスクが高まるため、早期の対応が求められます。
大規模修繕工事は、建物全体の安全性と快適性を保つために不可欠な作業です

 

□大規模修繕工事の確認申請について

大規模修繕工事を行う際に、確認申請が必要かどうかについての基準や手続きについて解説し
ます。

1. 確認申請が必要な建築工事の種類と定義

建築基準法によれば、以下のような条件を満たす建築物については、事前に確認申請を行う必
要があります。
・1号建築物
特殊建築物で、その用途に供する床面積の合計が100㎡を超えるもの。
・2号建築物
木造の建築物で、3階以上、または延べ面積が500㎡、高さ13mまたは軒の高さ9mを超えるも
の。
・3号建築物
木造以外の建築物で、2階以上、または延べ面積が200㎡を超えるもの。
・4号建築物
上記の1号~3号に該当しない建築物で、特定の都市計画区域や景観法で指定された区域内の
建築物。
これらの建築物に対して、大規模な修繕や模様替えを行う場合、確認申請の提出が義務付けら
れています。

2. マンション大規模修繕に確認申請は必要なのか

マンションの大規模修繕においても、上記の基準に該当する場合は確認申請が必要です。
特に、建物の主要構造部分(壁、柱、床、はり、屋根、階段など)において、過半数の修繕や模様
替えを行う場合に該当します。

3. 確認申請の手続きと必要書類

確認申請を行うには、建築主事(地方公共団体の有資格者)または民間の指定確認検査機関に
対して申請書類を提出する必要があります。一般的に必要な書類には以下が含まれます。
・確認申請書
・委任状
・建築計画概要書
・建築工事届
・設計図書(意匠図、設備図、構造図)
・構造計算書(地盤調査報告書を含む)
・安全証明書
各地域や指定機関によって必要な書類や手続きが異なるため、事前に該当する機関に確認す
ることが重要です。

4. 大規模修繕の必要性と事前チェック

大規模修繕は、建物の老朽化や劣化を防ぐために重要な工事です。
修繕の必要性や計画を事前に把握し、適切な手続きを行うことが、建物の維持管理にとって不
可欠です。

□大規模修繕工事のポイント

以下より、大規模修繕工事で押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

1:優先順位をつけて資金を効果的に使う

同じ築年数、同じ規模のマンションでも、立地や形状、使用状況によって建物に現れる劣化の症
状は様々です。
工事をする前には建物の状態をよく確認し、緊急性がある箇所はどこなのか、補修を先に延ばし
ても問題ないのか専門家に診てもらいましょう。
対応の優先順位を考慮して工事の内容を組むことで、より充実した工事仕様となり、効果的に積
立金を充てられます。

2:機能改良による居住性の向上

大規模修繕工事の第1の目的は、劣化症状を直し建物の状態を新築時まで戻す機能回復にあ
るとお話ししましたが、機能改良も暮らしやすさにつながる大きなポイントです。
近年ではバリアフリー化や防犯対策の強化、宅配ボックスの設置など、新築時にはなかった設
備を要望されるマンションも増えてきました。
時代や住む方によっても求められる機能は変わってきます。
上手く取り入れることで、暮らしやすさや価値の向上に繋がります。

3:建物の将来設計

大規模修繕工事では、管理組合でもたくさんの意見交換が行われますが、ぜひこれを機に建物
の将来像についても考えてみましょう。
例えば、「築40年の建物をあと10年で取り壊す」のと「築40年の建物をあと30年持たせる」ので
は、工事の方向性も資金の使い方も大きく変わってきます。
例えば、マンションはたくさんの方が共同で管理する建物ですので、管理組合で大きな方向性を
共有できていることは維持管理の上でもプラスに働きます。

□まとめ

大規模修繕工事は、建物の安全性と快適性を維持するための重要なプロセスです。
建築基準法の規定に基づく確認申請を通じて、法令順守を図りながら、適切な修繕計画を実施
することが求められます。
大規模修繕工事の内容としては、仮設工事、下地の補修工事、タイルの補修工事などが挙げら
れます。
建築基準法の規定に則り、適切な手続きを行うことで、安全で快適な建物の環境を維持できま
す。
本記事が大規模修繕工事の内容について理解を深める参考になれば幸いです。


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