建設現場で働く作業員や、足場の安全管理に関わる責任者の方々にとって、労働安全衛生法は
重要な知識です。
アパートの大規模修繕で必要な足場ですが、近年改正された足場の労働基準法は、安全な作業
環境を実現するために、理解しておくべき内容が盛り込まれています。
この記事では、足場の労働基準法について、改正点や安全対策、一側足場使用の制限などを詳
しく解説していきます。
安全な作業環境を構築し、労働災害を防止するために、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
□足場の定義
1: 足場とは
足場とは、労働者が作業箇所に接近して作業を行うために設ける仮設の作業床およびそれを支
持する仮設物を指します。
具体例として、本足場、一側足場、吊り足場、張出し足場、移動式足場、脚立足場などが含まれ
ます。
2: 法的に足場等の作業床を設けなければならない作業場所
労働安全衛生規則(安衛則)によれば、事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端や
開口部などを除く)で作業を行う場合、墜落による労働者の危険があるときは、足場を組み立て
るなどの方法により作業床を設けなければならないと定められています。
□足場の労働基準法による組立において気をつけるべきポイント
アパートの大規模修繕を行う時の足場の組立基準として気をつけるべきポイントについて、以下
に詳しく説明します。
1: 労働安全衛生規則509条より
509条では、足場に使用する材料について、著しい損傷や変形、腐食、虫食いなどの安全性が
担保されていない材料は使用しないことと定められています。
作業開始前には必ず安全点検を行い、問題のある材料は使用しないよう注意しましょう。
この点検は義務であり、作業員の命を守るために重要です。
2: 労働安全衛生規則563条より
563条では、2mを超える高所で一側足場以外の足場を組む場合の制限項目が示されています。
・足場の幅は40cm以上にすること。
・床材の隙間は3cm以下にすること。
・床材と建地の隙間は12cm未満にすること。
・移動式足場でない場合、床材が崩壊しないように2つ以上の支持物を取り付けること。
・落下の危険がある場合は、高さ10cm以上の幅木、メッシュシート、防網を使用すること。
これらの規定は、工具の落下防止や塗料の飛散、砂塵の飛散防止措置として重要です。
3: 労働安全衛生規則564条より
564条では、2m以上の足場の組立や解体、変更等の作業を行う場合の規則が定められていま
す。
・作業内容の周知徹底を行うこと。
・作業区域内への作業員以外の立入を禁止すること。
・悪天候時は作業を中止すること。
・足場材の緊結、取り外し、受け渡し等を行う際には以下の措置を取ること
1. 原則として幅40cm以上の作業床を設置すること。
2. 要求性能墜落制止用器具を使用させること。
・材料、器具、工具等を上げ下げする際には、つり綱やつり袋等を使用すること。
これらの規定に従うことで、安全な作業環境を確保し、作業員の安全を守れます。
□足場の労働基準法改正
1: 足場の法改正の背景と目的
建設業界では足場からの墜落・転落事故が多発しており、効果的な対策が長年求められていま
した。
特に、一側足場はその構造上転落のリスクが高く、死亡事故の原因となることが多々ありまし
た。
統計によると、建設業における墜落・転落事故は死亡災害の約40%を占めています。
2023年の労働安全衛生規則の改正は、建設業界における足場からの墜落・転落事故を減少さ
せるために実施されました。
この改正の背景には、墜落・転落事故の削減に加え、作業員の安全意識の向上や安全教育の
強化も含まれています。
安全な作業環境の確保は、労働者の生命と健康を守る上で非常に重要です。
法改正の主なポイントは以下の3つです。
・一側足場の使用範囲の明確化
・足場の点検者の指名を義務化
・ 指名した点検者の氏名の記録及び保存を義務化
2: 一側足場の使用範囲の明確化(2024年4月1日施行)
労働安全衛生規則561条では、事業者は足場について丈夫な構造のものでなければ使用しては
ならないと定められています。
2024年4月1日から施行される法改正により、一側足場の使用範囲が大幅に制限されます。
新たな規定では、建築物外面からの幅が1メートル以上の場所では基本的に二側足場(本足場)
の使用が義務付けられます。
一側足場は、幅が1メートル未満の場所や、つり足場を使用する際、または障害物などにより本
足場の設置が困難な場合に限定されます。
本足場は作業床に手すりが設置されるため、一側足場に比べて安全性が高く、これにより墜落・
転落事故の減少が期待されます。
3: 一側足場とは?
一側足場は、狭小な場所や建築物に密接する箇所で使用される足場の一種です。
建築物の一側にのみ支柱を設置し、その上に作業板やブラケットを配置する形式です。
この足場は限られたスペースでの作業に適しており、設置が比較的容易ですが、構造上の安全
性に課題があります。
手すりやその他の安全設備の設置が難しく、墜落や転落のリスクが高いです。
過去の労働災害には、一側足場からの墜落による事故が報告されています。
4: 一側足場使用の制限とその影響
一側足場の使用範囲の制限は、建設現場の安全性を高める一方で、工事を検討しているお客
様にも影響を及ぼす可能性があります。
最も直接的な影響は、足場の設置にかかるコストと時間の増加です。
本足場は部材が多く設置に時間がかかるため、工事のコストと工期に影響を及ぼします。
しかし、これらの変更は作業の安全性を大きく向上させ、作業員の健康と安全を守る上で大きな
メリットをもたらします。
5:足場の点検者の指名を義務化
足場の点検は、建設現場の安全を確保するために欠かせない作業です。
新たな法改正により、足場の点検者を指名することが義務化されました。
足場の点検は、以下のタイミングで行う必要があります。
1: 足場の組立後、変更後、一部解体後
2: 作業前(使用前)
3: 悪天候、地震の後
点検は、注文者(元請けなど)が1〜3の全てを行い、2は足場を使用する事業者(協力会社も含
む)が行います。
また、パトロールでも足場の点検表がチェックされますが、良好以外の表記を見ることは稀です。
しかし、実際に足場に登ると、指摘する項目が見つかることがあります。
足場に不備があると、その箇所からの墜落・転落が発生するリスクがあります。
不備がないことを確認するためにも、責任のある点検が求められます。
そこで新しい法改正では、足場の点検を確実に行うために点検者をあらかじめ指名することが義
務づけられました。
点検は指名された点検者が行わなければなりません。
もし不備があるにもかかわらず、点検者が見落としていた場合は、点検者の責任も問われること
になります。
足場の点検者に指名される人は、誰でも良いというわけではありません。
足場について十分な知識と経験を持つ人から選ぶ必要があります。
知識と経験を持たない人に任せると、不備を見つけられない可能性があります。
例えば、次の通達が参考になります。
・足場作業主任者: 技能講習修了だけでなく、能力向上教育を受け、最新の法令知識を持ってい
ることが条件です。
・計画作成参画者: 足場に係る工事の設計監理または施工管理の実務に3年以上従事した経験
があることや、一級建築士試験の合格者、一級土木施工管理技術検定または一級建築施工管
理技術検定の合格者などが該当します。
さらに、全国仮設安全事業協同組合や建設業労働災害防止協会が行う「仮設安全監理者資格
取得講習」「施工管理者等のための足場点検実務研修」など、足場の点検に必要な専門的知識
の習得のための教育、研修または講習を修了することが求められます。
そして、点検を実施したら、必ず記録を残します。
記録は従来使用していた足場点検表で問題ありませんが、点検者の指名も記入する必要があり
ます。
指名された点検者の責任を明確にすることで、より確実な点検が期待されます。
□まとめ
足場の労働基準法は、労働者の安全を守るための重要な法律です。
改正により、一側足場の使用制限や点検者の指名義務化など、より厳格な基準が設けられまし
た。
アパートの大規模修繕で必要な足場ですが、安全な足場の組立と使用には、構造や強度に関す
る知識、点検方法、作業員の安全意識向上、墜落防止対策などが重要です。
労働災害を防止するためには、足場の労働基準法を遵守し、安全な作業環境を整備することが
不可欠です。
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