不動産経営者にとって、外壁塗装は避けて通れない課題です。
建物の美観を保ち、資産価値を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
しかし、外壁塗装には費用がかかります。

その費用をどのように計上するか、悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
外壁塗装の費用は、減価償却費の対象となるケースがあります。
減価償却とは、長期間使用する資産の価値が時間とともに減っていくことを考慮し、その減価分
を毎年費用として計上する会計処理のことです。

外壁塗装を減価償却費として処理することで、節税効果が期待できます。
この記事では、外壁塗装の減価償却について、その仕組みからメリット・デメリットについてご紹
介します。
外壁塗装の費用をどのように計上するか迷っている不動産経営者の方は、ぜひ参考にしてくださ
い。

□アパートの外壁塗装の減価償却費について

外壁塗装の減価償却とは、簡単に言うと、外壁塗装にかかった費用を、建物の耐用年数にわ
たって分割して経費として処理することです。

1: 減価償却の対象となる外壁塗装

減価償却の対象となるのは、建物の価値を高めるような外壁塗装です。
具体的には、以下の条件を満たす場合が挙げられます。
・外壁塗装にかかった費用が20万円以上
・前回の外壁塗装から3年以上が経っている
・耐久性向上のために外壁塗装した

2: 減価償却の対象とならない外壁塗装

一方、建物の価値を現状維持するだけの外壁塗装は、減価償却の対象とはなりません。
このような外壁塗装は、修繕費として一括で経費処理されます。
具体的には、以下の様な外壁塗装は修繕費となります。
・雨漏りを直すための外壁塗装
・既存の塗料と同じ塗料で塗り替えるだけの外壁塗装

3: 減価償却と修繕費の違い

減価償却は、建物の価値を高めるような外壁塗装が対象、修繕費は、建物の価値を現状維持す
るだけの外壁塗装が対象です。
外壁塗装を減価償却するか、修繕費として処理するかは、工事の内容によって判断する必要が
あります。

 

 

□外壁工事の勘定科目を判断する2つのポイント

外壁塗装の費用を減価償却として計上するか、修繕費として一括処理するかを判断する際に
は、以下の2つのポイントを考慮する必要があります。

1: 工事の目的

工事の目的が、建物の価値を高めるものであれば減価償却の対象となり、現状維持であれば修
繕費となります。
例えば、デザインを一新する外壁塗装や、防水性を高める外壁塗装は、建物の価値を高める目
的で行われるため、減価償却の対象となります。
一方、雨漏りを直すだけの外壁塗装は、建物の価値を現状維持する目的で行われるため、修繕
費となります。

2: 工事の費用・頻度

工事の費用が20万円未満の場合や、3年以内の間隔で定期的に行われる工事は、修繕費として
処理されることが多いです。
しかし、費用が20万円以上で、3年以上の間隔で行われる工事であっても、必ずしも減価償却の
対象になるとは限りません。
例えば、外壁塗装の費用が60万円未満で、その修理・改良などに関わる固定資産の前期末に
おける所得金額のおよそ10%以下に相当する場合には、修繕費として処理されるケースもありま
す。

3: 不安な場合は専門家に相談を

減価償却と修繕費の判断は、ケースバイケースで判断が難しい場合があります。
不安な場合は、ぜひ一度当社にご相談ください。

 

□外壁塗装を減価償却費で処理するメリット・デメリット

外壁塗装を減価償却で処理することには、メリットとデメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

*メリット

減価償却の主なメリットは以下の通りです。

1: 節税効果

減価償却することで、毎年一定額を費用として計上できるため、税金を抑える効果が期待できま
す。

2: 事業収益の調整

減価償却は、事業収益を調整する効果もあります。
収益が安定していない時期に、減価償却を多く計上することで、利益を少なく見せることができま
す。

3: 融資の審査に有利

減価償却は、事業の安定性を示す指標の一つとして、金融機関からの融資審査において有利に
働く可能性があります。

*デメリット

減価償却の主なデメリットは以下の通りです。

1: 初年度の税負担軽減が限定的

減価償却は、耐用年数にわたって費用を分割して計上するため、初年度の税負担軽減は、修繕
費として一括処理した場合に比べて限定的です。

2: 計算や申告が複雑

減価償却の計算や申告は、修繕費に比べて複雑です。

3: 減価償却額の上限

減価償却額には上限があり、翌年の所得税を低くしたい場合、減価償却ではなく、一括で計上し
た方が節税になるケースもあります。

4: 金融機関からの減価償却不足と見なされるリスク

赤字の年に減価償却額を繰り越すと、金融機関から減価償却不足と見なされるリスクがありま
す。
外壁塗装を減価償却で処理するメリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて適切な
判断をすることが重要です。

□減価償却に必要な法定耐用年数

減価償却を行うためには、その資産の法定耐用年数を正確に把握する必要があります。
法定耐用年数とは、資産の種類や用途に応じて、税法上で定められたその資産の使用可能期
間のことです。

1: 法定耐用年数の概要

法定耐用年数は、資産の種類、構造、用途によって異なり、国税庁によって詳細に定められてい
ます。
例えば、建物の場合、構造材や使用目的によって耐用年数が異なります。
木造・合成樹脂造の建物であれば、事務所として使用する場合の法定耐用年数は24年、店舗や
住宅として使用する場合は22年とされています 。

2: 減価償却の計算方法

減価償却費の計算には、取得価額、償却率、経過年数が必要です。
計算式は次の通りです。
減価償却費=取得価額×償却率×経過年数
例えば、木造・合成樹脂造の建物(事務所)で外壁塗装に100万円を費やし、その耐用年数が24
年の場合、償却率は0.042となります。
参考までに以下耐用年数ごとの減価償却率です。

20年:0.05
22年:0.046
24年:0.042
30年:0.034
38年:0.027
39年:0.026
47年:0.022
50年:0.02

そして、初年度に外壁塗装を行った場合、9月1日から年度末までの期間である9か月分の減価
償却費は以下のように計算されます。
1,000,000円×0.042×9/12=31,500円
翌年以降の減価償却費は42,000円となります 。

3: 外壁塗装と法定耐用年数

外壁塗装には特定の法定耐用年数が設定されていないため、建物全体の法定耐用年数に従っ
て減価償却を行う必要があります。
例えば、塗料の寿命が10年とされていても、建物の法定耐用年数が50年であれば、その期間に
わたって減価償却を計上することになります。
この点についても注意が必要です 。

□まとめ

この記事では、外壁塗装の減価償却について解説しました。
外壁塗装を減価償却で処理するには、建物の価値を高めるような外壁塗装であること、費用が
20万円以上であること、前回の外壁塗装から3年以上が経過していることなどの条件を満たす必
要があります。
減価償却には、節税効果や事業収益の調整効果などメリットがありますが、初年度の税負担軽
減が限定的であったり、計算や申告が複雑であったりするなどのデメリットもあります。
外壁塗装を減価償却で処理するかどうかは、工事の内容や自社の状況を総合的に判断して決
める必要があります。
本記事がアパートの外壁塗装の減価償却について理解を深める参考になれば幸いです。


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